非遺伝性ミオパチー

非感染性炎症性ミオパチー

6.悪性腫瘍合併筋炎

DMに悪性腫瘍の合併率が一般人より高いことは、くりかえし疫学的に確かめられてきた。対象とする症例によって差があるが最近の報告も含めると9~42%の合併率が報告されている。疫学的にDMで悪性腫瘍の合併率の高くなる臨床的な因子がこれまで多数指摘されている(危険因子)。複数の調査で報告された危険因子として、高齢であること、男性であることが挙げられる。また皮膚症状が高度で皮膚の壊死、潰瘍があり、治療に抵抗性であること、病理学的に白血球貪食現象を伴う血管炎の所見があることがある。筋症状から見ると、遠位筋や呼吸筋が障害され、嚥下障害を伴い、治療抵抗性であることが挙げられている。

逆に、存在すると悪性腫瘍合併の確率が低くなる所見(非危険因子)として、間質性肺炎、関節炎などの関節症状、レーノー現象、心筋障害、発熱、抗核抗体、リンパ球減少症など、全般に膠原病との合併を示唆する所見が列挙されている(Zahr, 2011)。

一方、多発筋炎(PM)について癌の合併頻度は正常人と明らかな差がないとされることが多かった。しかし、一部の統計ではPMについても一般人よりは高いと報告されており(Sigurgeirsson,1992)、合併率は5~18%とされている。これまでの調査中で高いのはオーストラリアからの筋生検で確認したPM例を対象とする統計で(Buchbinder, 2001)、悪性腫瘍の頻度は一般人の2.0(1.4~2.7)倍であった。台湾の報告でもPMで高いとされ(Huang, 2009)、鼻咽頭癌合併の頻度が高いとされている。小児皮膚筋炎について十分な疫学的調査はされていないが、悪性腫瘍の合併はまれと考えられている。抗signal recognition particle(SRP)抗体陽性例および抗HMGCR抗体陽性での免疫介在性ミオパチーで腫瘍合併の頻度は高いと報告されている。封入体筋炎(IBM)につては悪性腫瘍の合併例が散発的に報告されており、頻度が増加しているとの少数の報告があるが一般には明らかな差は確認されていない。

以上述べた疫学的な解析にも課題がある。既調査の大部分でDMとPMの診断はBohan and Peter(1975ab)の診断基準によっている。従って、皮疹を伴わない probable DM 例(Dalakas, 2003)や免疫介在性ミオパチーがPM群から除外されていない可能性がある。

筋病理所見から癌合併筋炎(CAM)と非癌合併筋炎を区別することは困難である(Fig.44)。しかし癌合併DMの中に細胞浸潤が目立たない例が少なからず存在し、壊死線維の頻度が高い傾向が見られる。

Fig.44
V neck 領域に強い発赤と色素沈着を伴う皮疹がある。筋病理では細胞浸潤は比較的弱い。

診断のためには血清学的な検査が重要である。Targoffら(2006)はCAM患者で155kDa蛋白に対する抗体がみられ、その蛋白が transcriptional intermediary factore-1 gamma(TIF1γ)であることを報告した。この抗体は現時点で筋炎における悪性腫瘍のマーカーとして最も重要なものである。Trallero-Araguas ら(2012)による6報告312例の成人DM例についての集計では、抗155kDa抗体のCAM検出の感度は78%、特異度は89%であった。次に重要なのは従来MJ抗体と呼ばれたもので、抗原が nuclear matrix protein 2(NXP2)、別名 microrchidia3(MORC3)と判明した抗体である。米国からの報告では癌合併皮膚筋炎患者で抗TIF1γ抗体陽性が38%にたいし、抗NXP2抗体は17%の陽性率であった(Fiorentino, 2013)。本邦ではDMとPM患者での抗NXP2抗体の陽性率は1.6%で、DMの陽性患者での癌合併率は29%であった(Ichimura,2012)。

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