Leigh(1951)は生後6ヶ月から発達が止まり、傾眠、難聴、視神経萎縮、錐体路症状を呈し、亜急性に退行しながら意識障害が悪化し、月齢7ヶ月で死亡した男児を乳児亜急性壊死性脳脊髄症として報告した。病理学的には脳幹、視床、基底核、脊髄後索を主とする壊死が見られ、原因は不明であった。その後の症例に積み重ねにより、乳幼児に亜急性に出現する同様の病変分布の疾患群をLeigh 脳症とよび、ミトコンドリア異常がその多くで原因と考えられている。現在までミトコンドリアDNAと核DNAの異常をあわせると約60にのぼる遺伝子の異常が報告されており、母性遺伝、常染色体性劣性遺伝、X染色体性劣性遺伝のいずれもが知られている。最も多いのはmtDNAでコードされた呼吸鎖複合体VのATP 6 の変異であるが、その他に核DNAでコードされるピルビン酸脱水素酵素にも変異例がある(Naito, 2002)。筋病理学的にはCOX活性の低下線維など非特異的所見を呈するものがあるが、ragged red fiber は通常見られず、また何ら異常を呈さない例も多い。診断には脳MRIにおける大脳基底核や視床の変化が重要である。