骨格筋病理検査総論

はじめに

筋肉の小さな断片を手術的に採取して、顕微鏡で観察するという直接的な検査が筋生検である。筋生検は診断のために病理学的な確認が必要な時に実施される。筋生検において重要なことはまず、検査が必要な症例を厳密に選択すること、次に疾患に特徴的な病理変化を観察しやすい部位を選択すること、そして最後に採取した筋を十分な水準で検査できる態勢をあらかじめ整えることである。

筋の萎縮が高度になって、あまり筋線維が残存していない部位は検査には不向きである。軽度から中等度の萎縮、筋力低下が認められる部位では、疾患特異的な病変を観察しやすい。生検された筋組織はホルマリン固定、パラフィン包埋の後にHE染色などのルーチン病理検査を行うという方法のみでは十分な解析はできない。凍結標本を作製し、クリオスタットで薄切切片について組織化学的な検査と、免疫組織化学的な検査を行うことが必要である。また、筋の小片をグルタール固定し、電子顕微鏡検査のためのエポン包埋を行う。さらに筋組織から分離したDNAやRNAが診断に重要な場合がある。もちろん、これらの検査については、あらかじめ患者さんへの十分な説明をして、十分納得の上で、文書での同意を頂くことが必要である。実施する以上は、得られた検体から最大限の所見をえるように、検体処理、検査方法、所見の取り方に配慮が必要である。その一助となればと考え、実際的な点を中心に以下述べる。

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