正常筋の横断凍結切片において、筋束内で筋線維の形は鈍角の隅を持つ敷石状で、小血管などの間質を除き、ほぼすきまなく配列する(Fig.1)。
Fig.1
凍結切片横断面のHE染色では筋束を形成し隙間ない敷石状に筋線維がみられ、間質には血管、筋内神経束、
脂肪識などが見られる。筋線維には赤みの強い赤筋(type 1 fibre)と白っぽい白筋(type 2 fibre) がある。
Normal muscle (frozen section, HE stain)
各線維の核は筋鞘に接しているものが大部分で、筋形質内部にあるもの(中心核または内在核)は3%以下である。筋線維の横径の差は少なく、大部分は40から60μmだが、年齢差や性差がある。
筋束外縁の結合織には血管、少量の脂肪織、筋内神経束、筋紡錘などが存在する。間質は筋束を取り巻く筋外鞘(perimysium)と筋束内の筋線維間に存在する正常ではわずかのスペースである筋内鞘 (endomysium) に大別できる(Fig.2)。
Fig.2
筋束(fascicle)と、その周囲の間質である筋外鞘(perimysium:P)、および筋束内の筋線維間にある筋内鞘(endomysium:E)。正常筋では筋内鞘はきわめて狭い。
筋外鞘には大小の血管と筋内神経束や脂肪、筋紡錘がみられることがある。筋内神経束の近傍の筋線維上には神経筋接合部が存在することがある (Fig.3a,b)。
筋紡錘は筋の長さとその変化を感知する機械的受容体 (mechanoreceptor)で、被包内に nuclear bag 1 fibre (核袋1線維), nuclear bag 2 fibre (核袋2線維) , nuclear chain fibre (核鎖線維) の3種類の錘内線維 (intrafusal fibre) を収納している (Fig.3c)。
Fig.3
a,b:筋内神経束(円内は神経筋接合部)
c:筋紡錘
Type 2A,B fiber はpH4.2 の酸性前処置では失活するが、type 2B fiber のみはpH4.6で中間的な活性を示す (Fig. 4)。
Fig.4
凍結切片で行う組織化学検査の一つであるmyosin ATPase 活性像でファイバータイプをより詳しく同定できる。Type 1とtype2線維は入り交じってチェッカーフラッグパターンを呈する。反応直前に切片が置かれていた液のpHによって、活性が異なり、pH10.4のアルカリ液での反応がルーチン検査としてtype1と2線維の判定に用いられる。酸性側(pH4.2)では両type線維での酵素活性が逆転する。正常筋では見られないが、酸性側では再生線維などは中間の活性をもつtype 2C線維となる。中間のpH4.6ではさらにtype2A とtype2B線維が区別できる。
電顕で観察すると、筋内には筋原線維 (myofibril) があり、その中に細いミオフィラメント (thin myofilament) と太い (thick myofilament) の二種類のミオフィラメントが存在する (Fig.5)。
Fig.5
Electron micrograph of normal skeletal muscle
細いミオフィラメントの主成分はアクチンで、太いミオフィラメントの主成分はミオシンである。ミオフィラメントはZ帯(z-disk)とM線(M line)を伴って規則正しく配列する。細いミオフィラメントはZ帯でまとめらており、M線でまとまった太いミオフィラメントの間に滑り込んで、筋が収縮する。Z帯とZ帯の間がサルコメアと呼ばれる1単位を形成する。筋原線維の傍らには横管系 (T system)と筋小胞体(sarcoplasmic reticulum)、ミトコンドリア(mitochondria) などが見られる。筋鞘は形質膜 (plasma membrane) とその外側の基底膜 (basal lamina)からなり、その直下には筋核とゴルジ装置 (Golgi apparatus) やグリコーゲン顆粒 (glycogen granule) 、さらに限られた部位では筋鞘付近に衛星細胞 (satellite cell) や神経筋接合部 (neuromuscular junction)が観察できる。