遺伝性ミオパチー

先天性ミオパチー

2.セントラルコア病 (central core disease)

筋病理で筋線維の中心部にコアとよばれるミトコンドリア酵素の活性低下部をみとめる病態で、ほとんどの例でリアノジン受容体の遺伝子異常がある(Fig. 26)。

Fig.26
NADH-TR活性像などで筋線維に活性低下部位がみられるのがcentral coreで、type 1 fibreで出現する。形態的には神経原性変化で出現することのある target fibre と類似しているが、central core は筋線維の全長にわたり存在し、神経原性の変化を伴うことはない。

コアはtype 1 線維にみられる。Target fiber と異なり、コア周辺に部分的な縁取りをみることはあるが、第2層として酸化酵素が濃く染色する第二層がみられない、また筋線維の縦軸方向にかなりの長さにわたって、多くの意見では線維全長にわたり、存在するなどの差違が指摘されている。電子顕微鏡ではコアではミトコンドリアがみられず、筋原線維は保たれてはいるもののZ線の乱れが見られることが多い。

T管に伝えられた電気的興奮を電位依存性Ca チャンネルから筋小胞体に伝えるのがリアノジン受容体I (ryanodine receptor I) である。それをコードする遺伝子RYR1のイオンチャンネル孔部をコードするC端に変異が存在するとセントラルコア病が起きやすく、よりN端側の変異では悪性高熱になりやすいと言われている。

疾患は乳幼児期から近位筋下肢優位に筋萎縮がみられ、運動発達は遅れるが歩行は可能な例が多い。脊椎側弯や先天性股関節脱臼などの骨格異常を伴うことがある。常染色体性優性遺伝をとる。

マルチミニコアは酸化酵素の活性低下範囲が5から20nm の小さなコアが多数 type 1とtype 2 線維に出現するものである。筋病理学的には非特異的な所見であるが、これが主な病理変化として出現する先天性ミオパチーにセレノプロテイン (SEPN1) 遺伝子異常症がある。先天性筋ジストロフィーの項で述べたように、rigid spine や関節拘縮を伴いやすく、一部に呼吸不全に至るものがある。RYR1遺伝子異常症にもマルチミニコアを示すものがある。

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