遺伝性ミオパチー

先天性ミオパチー

3.中心核ミオパチー

成熟した筋細胞の核、筋核は95%以上の筋線維で細胞の表面、筋鞘の直下に存在するが、多くのミオパチーでは中心核の比率が増加する。また神経原性筋萎縮でも慢性の経過をたどると中心核が増加する。このように中心核の増加は非特異的な筋病理所見である。一方、ここで取り上げる先天性ミオパチーの一つ中心核ミオパチー (centronuclear myopathy:CNM)では、きわめて高頻度の中心核の出現が、筋変性などの他の変化に比べて突出して目立った所見である(Fig. 27)。縦断面で見ると中心核が筋線維の長軸に沿って連なる、連銭形成をみることも珍しくない。

Fig.27
ミオパチーで内在核は普通にみられるが、きわめて高頻度で、縦断面でも核が長い連銭形成を示す特徴を示す先天性ミオパチーが centronuclear myopathy である。従来この病態に使われたmyotubular myopathy の病名が最近は乳児重症型に主に使われている。

中心核ミオパチーを起こす原因遺伝子には、最も重篤な乳児型であるX連鎖性ミオチュブラーミオパチーの原因であるMTM1(myotubularinをコード)、常優で若年発症のCNMの原因であるDNM2 (dynamin 2)、常劣または常優で青年期発症の多いBIN1(amphiphysin 2)、常劣で学童期発症のCCDC78(coiled-coil domain containing protein 78)のほか、最近従来の病型に加えて常劣でCNMの病型もとることが報告されたRYR1 (ryanodin receptor 1)と TTN(titin)遺伝子異常などがある。このことから、他の先天性ミオパチーとCNMの境界が必ずしも画然としなくなりつつあるともいえる。なお、これらの遺伝子異常が中心核増加を引き起こす共通の機序は不明であるが、その多くが膜を介する物質輸送やオートファジーに関与する蛋白であることと、T管とSRからなる triad や核において機能する蛋白であることが指摘されている(Jungbluth, 2014)。

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