従来知られてきたミトコンドリア脳筋症の枠を越えて、ミトコンドリア異常症のより広い存在を示唆する病態について述べる。
新生児期にはフロッピーインファントで、この時期の筋生検ではragged red fiber がありながら、数ヶ月後から改善し、筋組織でも改善が見られる。この病態ではmtDNA のグルタミン酸tRNAをコードする14674の点変異が発見された(Horvath, 2009; Mimaki, 2010)。成長とともに改善する機序は不明であるが、核遺伝子の影響が関与する可能性が考えられている。
運動で誘発される高CK血症の中にはragged red fiber をともなうミトコンドリア筋症が報告されている (Nishigaki, 2002)。また時々筋痛や軽度の筋力低下とともに高CK血症が見られる病態は、これまで薬剤やウイルスなどの感染性などの疑いとして検査され、なお原因が不明となる例が多かった。このような例の中にmtDNA のsingle nucleotide polymorphism(SNP)が関与するものがあると報告されている(Okamoto, 2011)。