筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方を障害する運動ニューロン疾患である。
その中には孤発性とともに、5から10%の家族性の患者が存在する。すでにC9ORF72やSOD1遺伝子異常をはじめとする20種類を超える家族性ALSが知られている。運動系以外の神経系が障害される例は孤発性と家族性ALSのいずれにもあり、例えばC9ORF72変異の家系では前頭側頭型認知症が合併しうることが知られている。以上のような点から、ALSは単一疾患ではなく、運動ニューロンの障害を中心としてまとめられた複数の病態からなる疾患群である可能性が考え得る。
このような背景からもALSの筋病理が多様であることは理解できるが、共通する変化として神経原性筋萎縮の所見は常にみとめられる。通常、病初期には小角化線維の小群集が散在するのが観察される。進行とともに萎縮線維の割合が増加し、変性線維が出現する。しかし、ターゲット/ターゲトイド線維、中心核の増加、スプリット線維などの内部構築異常は例外的である。少数の進行過程にある例では軽度の炎症所見や壊死線維が観察されることがある。大規模なファイバータイプ・グルーピングは通常見られない。