遺伝性ミオパチー

筋ジストロフィー

4.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

(1)病態

特徴的な分布の筋萎縮を示すこの病型は、Landouzy-Dejerine 型筋ジストロフィーとも呼ばれている。有病率は5/10万人とされている。常染色体性優性遺伝を示し、関連遺伝子は4q35、すなわち第4染色体長腕端付近にある。ここでD4Z4 repeatの欠失による異常な短縮のために通常11から100の繰り返しが10以下になる。このためD4Z4内の遺伝子であるDUX4の発現が抑制され、このことがD4Z4より上流の遺伝子にmethylationの低下による発現異常をひきおこし、細胞死が惹起される(Tupler, 2004; Deak , 2007; Statland, 2011)。

(2)症状と診断

多くの場合、患者が症状を自覚するのは、上肢の前方および側方挙上(それぞれ肩関節の屈曲および回外)が困難となった時点である。しかし、この時点で診察すると顔面筋の萎縮が明らかである。従って、真の発症時期は明らかではないことが多い。一般的には顔面の筋力低下の発症は幼児期で、上肢帯の症状を自覚するのが青年期であるが、中年になって、初めて発見される例も多い。おそらく、生涯無自覚の軽症例も存在すると推定される。 初発症状である顔面筋萎縮は、眼輪筋、口輪筋、頬骨筋に起こりやすく、側頭筋、咬筋、外眼筋などは初期には障害されにくい。上肢帯の筋のなかでも、僧帽筋、菱形筋、前鋸筋、広背筋など、肩甲骨を胸壁に固定する筋を中心に障害されやすい。肩甲骨は胸壁から遊離したようにその輪郭がめだつようになり、上側方に移動する。これに伴い頚部の外縁を形成する僧帽筋外縁が側方に広がり、首の下部が広がったように見える。病初期には比較的筋力の保たれる棘上筋と三角筋の働きで腕を水平までは側方挙上(外転)できるが、それより上に上げることは、肩甲骨が安定しないために、できない。さらに下肢の諸筋、特に前脛骨筋の筋力低下を示す例がある。また網膜の血管異常(Coats 症候群)や難聴の合併例が報告されている(Wulff,1982; Taylor,1982)。

(3)筋病理

ミオパチーにしばしば炎症が加わることが多い。ミオパチーはDMDなどに比較して変性の程度が軽い傾向があり、それに伴って再生線維もめだたない。具体的には、筋線維横径の大小不同あるが、その原因は萎縮線維とともに肥大線維があることにある。Type 1 線維萎縮の傾向を見せ、萎縮線維の一部は輪郭が角化しているおり、小群集を形成する様に見えることがある。中心核は存在するが他の筋ジストロフィーに比較して少ない。また軽度の筋線維内部構築の異常や間質の線維化が見られることがある。

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