第3章 筋疾患の診察と検査

手足の運動の異常に気づいて病院を訪れる人を速やかに診断し、適切な治療に結びつけるには、基本的ステップを遵守する一方、無駄を避けて症状に応じて方法を変える柔軟性の両方が必要である。また既知の病気の概念と知識で全てを解決しようとせずに、まず個々の患者の症状や検査結果をありのままに、細心に解析することも重要である。

病歴の聴取

筋疾患はしばしば乳幼児期、時にはもっと遡って胎児期からはじまる。注意深い母親は、胎児の動きが少ないことに気づくことがある。小児の患者ではもちろんだが、たとえ成人の発症であっても、周産期の状況や学齢期の運動能力を確認することが必要である。運動会のかけっこの順位はどうだったか、跳び箱は跳べただろうか、鉄棒の逆上がりや懸垂はできたか?これらは子供時代の想い出として、大人になっても誰もが覚えている信頼度の高い情報である。

各年代にどの程度の筋力があったのかを正確に知ることは難しいが、スポーツや登山などの経験、従事した仕事の体力的な要求度などを聞くことは参考になる。いつ頃から駅の階段がつらくなったのか、またゴルフのスコアが急に悪くなったのは何時かなどの、具体的な情報が役立つ。

日常生活の中の、筋力が要求される動作を具体的に聞くことも参考になる。トイレからの立ち上がり、布団の上げ下ろし、髪の毛の手入れで腕を挙げる動作、瓶や缶を開けることなどについての質問からも有用な手がかりを得られる。

こうして、いつ頃筋力低下がはじまったのか、最初の筋力低下の部位は上肢か、下肢か、そして遠位筋か、近位筋かが分かれば診察以前に疾患のあらましが明らかになることが多いので、十分に時間をかける価値がある。

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