遺伝性ミオパチー

先天性ミオパチー

従来遺伝性ミオパチーのなかで筋ジストロフィーに比べて進行が激しくないものを先天性ミオパチー(congenital myopathy)と呼んできた。しかし、その中にも進行の早い病型が少なからず見いだされるために、筋ジストロフィーとの境界は不明瞭となっている部分がある。この中には筋病理学的な所見を中心に病名がつけられ、一つの疾患となったものが多数ある。

1.ネマリン・ミオパチー (nemaline myopathy)

ネマリン小体は主に筋形質に紡錘状や短い糸くず状に見える構造で、とくにゴモリトリクローム染色で暗紫色に染まり見分けやすい (Fig. 22)。

Fig.22
ゴモリトリクローム染色 (変法)で青黒く染まる小さな紡錘状の構造であるネマリン小体 (nemaline rod) の出現を主要所見とするミオパチーがネマリンミオパチーである。

電子顕微鏡では、Z帯と同じ電子密度の紡錐形の小体がZ帯と連続して観察されることがある (Fig. 23)。

Fig.23
Nemaline rod (arrows) は電子顕微鏡ではZ線とほぼ同じ電子密度の構造で、一部Z線と連続していることからも、それに関連するものであることがわかる。

この小体が出現することを特徴とする先天性ミオパチーをネマリン・ミオパチーと呼んでいる。この疾患は先天性ミオパチーの中では最も頻度が高いが、その中には少なくとも7つの異なる疾患が存在する。しかもネマリン小体の出現は炎症性筋症(筋炎)をはじめとして、他のミオパチーでも珍しくないため、慎重に診断しなければならない。以下に原因遺伝子変異ごとに概要を記述する。

先天性ネマリン・ミオパチーの臨床症状で比較的共通性の高いものとして、顔面、頚部、四肢近位および遠位筋の萎縮と筋力低下がみられる。顔はミオパチー顔貌で、テント状の上唇、高口蓋、下顎後退がみられる。良性先天型では歩行可能な例が多いが、中途から呼吸不全が徐々に加わる例がしばしばある。通常血清CK値は正常である。

新生児重症型では筋緊張低下によるフロッピー・インファントの状態がみられ、哺乳困難、呼吸不全となる。在胎中に死亡する例もある。

成人発症型ネマリン・ミオパチーは先天性ミオパチーが遅れて発症したと思われる、顔面などの変化を伴う例がある一方、それらがなく、複数の異なる病態からなる症候群ととらえるのが適切と思われる疾患群が存在する。その一つが、M蛋白血症を伴う比較的急性発症のミオパチーで(Engel, 1966b)、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、自己末梢血幹細胞移植などによる治療が有効であった例が報告されている(Doppler, 2013)。

その他、神経原性変化を伴う例やHIV感染に伴う例などが報告されている。

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