皮膚筋炎の皮膚病変にはヘリオトロープ疹、ゴットロン丘疹をふくむゴットロン兆候、ショール兆候、Vネック兆候など多彩だが、ある程度疾患特異性を持つものが多い。また潰瘍形成に達するものは悪性腫瘍に合併する例が多いともいわれている。いずれも物理的刺激を受け続けると病変が形成されるケプネル現象と解釈できるといわれている。
筋病理学的には細胞浸潤はおもにperimysiumとよばれる筋束間の間質にみられ、とくに血管周囲にめだつ。筋線維の萎縮と変性、壊死および再生が見られるが、とくに筋束周囲におきやすい傾向(perifascicular atrophy) (Fig.44)があり、診断基準でもその所見が重要視されている(Tab.6)。
Fig.44
皮膚筋炎では筋束周縁の筋線維に萎縮がみられる perifascicular atrophy が見られる。
診断 | 皮膚筋炎 | 非ミオパチー型皮膚筋炎 | |
確実 | 疑 | ||
ミオパチーによる 筋力低下 |
あり | あり | なし |
筋電図 | 筋原性 | 筋原性 | 筋原性または非特異的変化 |
筋原性酵素 | 高(ときに正常の50倍におよぶ)または正常 | 高 | 高(ときに正常の10倍におよぶ)または正常 |
筋生検 | 筋束周囲・血管周囲 細胞浸潤、 perifascicular atrophy |
筋束周囲・血管周囲 細胞浸潤、 perifascicular atrophy |
非特異的変化または皮膚筋炎の変化 (subclinical myopathy) |
皮膚病変または石灰化 | あり | 検知されず | あり |
Tab.6
Dalakas らの DM の診断基準では皮疹にくわえて細胞浸潤と perifascicular atrophy の存在が重要視されている。
このほか重症例で観察されやすいのは筋束全体が高度の変性に陥った壊死線維の集蔟が散見される状態である。免疫組織学的には間質の浸潤細胞の主体はCD4+細胞である。CD20+細胞も多数出現することがある(Fig.45)。
Fig.45
間質の血管周囲の浸潤細胞にはB cell, CD4+Tcell,macrophage などが主にみられる。
壊死線維ではこれにマクロファージが動員されている。MHC class I 抗原の異常発現は亢進しているが、PMにおけるそれのように一様ではなく、筋束周囲に強い傾向がある。組織化学的には筋束周囲の萎縮線維では type 2C 線維の頻度が高く、このことは再生過程にある筋線維が多いことを示唆している。
皮膚筋炎では筋内の血管内細胞に電子顕微鏡で顆粒状管状封入体 (granulotubular inclusion) が出現することがあることが古くから報告されている。また筋内毛細血管の減少も定量的な検討で認められている(Emslie-Smith,1990)。しかし、皮膚筋炎における筋線維の変性・壊死と細胞浸潤と血管病変の関係は十分に解明されていない。
小児皮膚筋炎(juvenile dermatomyositis: JDM)では皮膚症状が筋症状に先行することがしばしばである。皮膚病変は成人のそれと明らかな差はない。間質性肺炎の頻度は成人より低いとされてきたが、当初は不顕性で後に重篤になる場合があり全例で慎重な検査が必要である。筋力低下が下肢帯、上肢帯、頚筋などに起こりやすく、筋痛を伴うと患児は手足を動かしたがらず、関節拘縮が早期に起きることがある。筋病理では血管炎の変化が目立ちやすいこと、壊死線維の群集が見られることがあること、perifascicular atrophy が強い傾向があること、細胞浸潤は血管周囲に強く、CD4+細胞が含まれていることが多く、また組織内に石灰化が起きやすいなどの特徴がある。