良い染色とは何か

染色の良し悪しが診断を左右する

細胞成分や病変などを正しく反映した良質な染色を行うことは、診断や研究の遂行にとって極めて重要なことです。
良い染色結果を得るためには、標本作成のプロセスすべてが適切に行われることが必要です。

的確な病理診断のために

不適切な染色像が誤診を招く

左図は小脳のヘマトキシリン・エオジン染色標本です。中央にはプルキンエ細胞が2つあります。小脳をヘマトキシリン・エオジン染色で染めると、正常なプルキンエ細胞ならば核は青紫色に、細胞質はピンク色に染まります。
ところが、この2つのプルキンエ細胞は細胞質と核が共に濃い赤い色をしており、また、核、細胞質共に萎縮しているように見えます。
従って、これらプルキンエ細胞は正常とは言えず、細胞質が赤くなり萎縮する虚血性変化と診断する人も多いと思います。
しかし、これは虚血性変化ではありません。実は、劣化した染色液を使用したため、本来染まるべき色に染まらなかったにすぎません。これは、不適切な染色像が誤診を招く一例です。
つまり、染色を適切に行うことは病理診断において重要な要素の1つと言えます。

中枢神経系の染色の基本

中枢神経系に特異的な構造の検出

中枢神経系組織には一般組織にはない特異的な構造があることが知られています。
これら特異的な構造は、特殊な染色法を用いて検出することができます。
我々は数多くある染色法の中から、主に6つの染色法を用いて中枢神経系の病理診断を行っています。

一般染色:組織の成り立ちを概観する

ヘマトキシリン・エオジン染色

細胞核と細胞形質を違った2種類の色調に染め分ける

特殊染色:ある特定の組織成分のみ選択的に染める

クリューバ・バレラ染色

ニッスル小体と髄鞘を染める

ボディアン染色

神経線維および異常線維成分を染める

ガリアス・ブラーク染色

リン酸化タウの蓄積と多系統萎縮症のグリア細胞質内封入体を染める

ホルツァー染色

アストロサイトの突起およびグリオーシスのグリア線維成分を染める

免疫染色

抗体を用いて切片上の特定の抗原のみを染める

大型脳病理標本を作製

中枢神経系に生じる病変の広がりを大切片調べることにより、病変の初発部位からの成り立ちを知ることができます。
また、生前の画像検査(CT、MRI など)との対比も容易になります。小さな標準ガラススライド用に脳切片を細かく切ってしまう必要もなく、また、一目瞭然として視覚に訴えることもできます。このように、大型脳病理標本を作製する意義は大きいのです。

中枢神経系の染色作製

組織を顕微鏡で観察するためには、以下の一連の行程を経る必要があります。
多くの研究室や検査室において自動包埋装置や自動染色装置などが用いられていますが、ここではヒトの脳の固定から封入までの一連の作業をマニュアルで行う方法について解説します。

手順

10

⑩ 薄切

組織を染色し顕微鏡で観察するために組織を薄く切りスライドグラスに貼付ける処置

スタッフ