⑫ 染色

ガリアス・ブラーク(Gallyas-Braak)染色

アルツハイマー神経原線維変化やグリア封入体などのリン酸化タウの蓄積や、多系統萎縮症のグリア胞体内封入体glial cytoplasmic inclusionのαシヌクレインの凝集体を黒色に染める。これら凝集体は免疫染色でも検出できるが、大切片における変性疾患の検索方法として有用な方法である。

染色手順

注意:鍍銀・還元・鍍金の行程では、金属製品の使用は避け、プラスチックおよびガラス製品を用いる。

染色手順条件切片の色
① 脱パラフィン、水洗
② 0.25%過マンガン酸カリウム水溶液15分赤茶色
③ 流水洗
④ 2%シュウ酸水溶液1分
⑤ 流水洗
⑥ 蒸留水洗1分×3回
⑦ アルカリヨウ化銀液2〜5分
⑧ 0.5%酢酸水溶液1分×3回
⑨ 還元液
  • 冷やした液を用いてゆっくりと反応させる。
  • 切片全体の構造がわかる程度に薄く色づくまで反応させる。
うすい褐色
⑩ 0.5%酢酸水溶液1分×3回
⑪ 流水洗
⑫ 蒸留水洗
⑬ 1%塩化金水溶液5分〜15分灰白色
⑭ 流水洗
⑮ 定着:写真の定着液(10倍希釈)もしくは5%チオ硫酸ナトリウム水溶液10分うす紫色
⑯ 流水洗10分以上
⑰ 核染
(ケルンエヒトロート)
1〜5分程度
⑱ 流水洗10分
⑲ 脱水、透徹、封入

作業手順

作業色変化

①脱パラフィン、水洗

②0.25%過マンガン酸カリウム水溶液

  • 15分

赤茶色になる

③流水洗

  • 数分

④2%シュウ酸水溶液

  • 1分

シュウ酸に入れる前

入れた後(白くなる)

⑤流水洗

  • 数分

⑥蒸留水洗

  • 1分×3回
  • ここからプラスチック製ピンセットを使う

⑦ アルカリヨウ化銀液

  • 2〜5分

⑧ 0.5%酢酸水溶液

  • 1分×3回

⑨ 還元液

  • 冷やした液を用いてゆっくりと反応させる。
  • 切片全体の構造がわかる程度に薄く色づくまで反応させる。
  • 色の変化を見るために、シャーレの中で反応させる。
  • 反応時間は多くの場合10分を超えるが、切片によって反応時間は異なるため注意する
    ※切片A:5分で色づき15分で終了
    ※切片B:13分で色づき17分で終了
  • 還元液を常温で反応させると、反応は非常に早く進み制御できないため、必ず冷やした還元液を用いること。

⑩ 0.5%酢酸水溶液

  • 1分×3回


還元液は時間とともに黒ずむ。液を入れたまま放置するとガラス器具に銀鏡反応による汚れがつき落ちなくなるため、使用後は速やかに器具を洗うこと。

切片A

8分後:うっすらと部分的に黒褐色になる 15分後:全体の構造が黒褐色に浮かび上がる 20分後:黒褐色に塗りつぶされる。全体の構造は分かりづらい。

切片B

13分後:うっすらと部分的に黒褐色になる 17分後:全体の構造が黒褐色に浮かび上がる

⑪ 流水洗

  • 数分

⑫ 蒸留水洗

  • 1分×3回

⑬ 1%塩化金水溶液

  • 5分〜15分
還元8分:白くなる 還元15分:灰色になる。余分な色がおちて輪郭が明瞭になる 還元20分:黒灰色になる

⑭ 流水洗

  • 数分
  • ここから金属製器具を使用しても良い

⑮ 定着

写真の定着液(10倍希釈)もしくは5%チオ硫酸ナトリウム水溶液

  • 10分
還元8分:ごくうすい薄紫 還元15分:薄紫 還元20分:灰紫

⑯ 流水洗

  • 10分以上

⑰ 核染(ケルンエヒトロート)

  • 1〜5分程度

⑱ 流水洗

  • 10分

⑲ 脱水、透徹、封入

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染色結果

還元時間の違いによる染色結果の違い

還元8分還元15分還元20分

40倍

200倍

400倍

40倍

200倍

400倍

40倍

200倍

400倍
還元8分

全体的に色が薄い。この染色の陽性像とはならない。

還元15分

細かな線維の様子も把握できる程度に黒くしっかりと染色されている。

還元20分

背景が黒く染まっている。細胞は黒く塗りつぶされるように染まり、細かな構造は分からない。

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還元液の反応の注意事項

還元液の温度

常温の還元液では反応が早く進みすぐに全体が黒褐色にぬりつぶされてしまう。

反応を制御するためには、冷えた還元液でゆっくりと反応を進めること。

冷えた還元液:5分経過

常温の還元液:5分経過

スライドガラスの種類

MASコートのスライドガラスはガラス全体が黒くなってしまうので、使用しない方がよい(染色はできる)。

我々はシランコーティングや卵白アルブミンコーティングを使用している。

冷えた還元液:5分経過

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試薬

  1. 0.25%過マンガン酸カリウム水溶液
  2. 2%シュウ酸水溶液
  3. アルカリヨウ化銀液
  4. 0.5%酢酸水溶液
  5. 還元液(A液とB液の混合液)
  6. 1%塩化金水溶液
  7. 写真の定着液(10倍希釈)

試薬の調整

アルカリヨウ化銀液

蒸留水に水酸化ナトリウム、ヨウ化カリウムの順に溶かしてから、1%硝酸銀水溶液をゆっくりと混ぜる。

硝酸銀が入ると白濁するが混ぜると透明になる。

水酸化ナトリウム4g
ヨウ化カリウム10g
1%硝酸銀水溶液3.5ml
蒸留水100ml

還元液(A液とB液の混合液)

A液

蒸留水に硝酸アンモニウム、硝酸銀、ケイタングステン酸の順に溶かし、最後にホルムアルデヒド水溶液を加える。

硝酸アンモニウム0.2g
硝酸銀0.2g
ケイタングステン酸1g
ホルムアルデヒド水溶液(37〜38%)0.5ml
蒸留水100ml
B液

蒸留水に無水炭酸ナトリウムを溶かす。

無水炭酸ナトリウム5g
蒸留水100ml
還元液

使用直前にB液に等量のA液を少しづつ注いで良く撹拌する。A液が入ると白濁するが、混ぜると透明になる。

1%塩化金水溶液

繰り返し使用可能である。使用後濾過し、冷蔵保存する

塩化金1g
蒸留水100ml

試薬の調整ワンポイント

使用する試薬の種類が多く手間がかかる印象があるが、何回も使用できる試薬や作り置きすることができる試薬が多いため、一度用意すればさほど手間はかからない。

作り置きすると便利な試薬

還元液A液およびB液
(冷蔵保存。使用時に必要量の還元液を調整)
アルカリヨウ化銀液(冷蔵保存)
 
1%硝酸銀水溶液(冷蔵保存)
 

※ 長期保存すると黒く変色してくるので注意する
1%塩化金水溶液(冷蔵保存)
2%シュウ酸水溶液
定着液

※1%塩化金水溶液、2%シュウ酸水溶液、定着液は、長期保存が可能で他の銀染色にも使用できるため、常備すると便利である。

複数回使用可能な試薬(冷蔵保存)

一度使用した試薬を後日再利用できる試薬がある。

① 連日染色する際に再利用できる試薬
② 長期間に渡って繰り返し使用できる試薬