東京都医学総合研究所は、平成23年4月に医学系3研究所が統合した新しい研究所であり、脳病理標本リサーチセンターを立ち上げ、都立病院等の施設において、脳神経病理診断の精度向上への寄与を目標に掲げた活動を展開している。本センターには、約5,000例のヒト脳神経疾患の病理標本やブロック、付随する資料などのリサーチリソースがあり、各種神経疾患の病態解明の研究に加えて、医師の専門医取得等の研修や生涯研修に適宜活用してきた。
現在これらの標本をバーチャルスライド機器により高精度スキャンし専用サーバに搭載することにより、「東京都医学研・脳神経病理データベース」を構築しはじめている。我々は、これらの研究資産とデジタル化したデータベースを原資として、診療(診断)レベルの向上、教育効率の向上に向けた様々なコンテンツを提案している。
所蔵する脳病理ガラス標本をバーチャルスライド機器により高精度スキャンをした約1,000コンテンツの画像データを、都医学研・脳神経病理データベースサーバに搭載した(http://pathologycenter.jp)。正常像、異常細胞病理像、疾病分類などのチャプターを設定し、それぞれのコンテンツを割り振った。大学での講義やセミナー企画などにおいて、これらのコンテンツを遠隔から操作し、実習用のツールとしてのユーザビリティーを検証した。また、都立病院職員用の学習室や院内カンファレンスの専用ルームの作成を行い、専門家育成、院内の情報の共有化のためのツールを試験運用した。
病院で行われている病理検討会などで使われるパワーポイントファイルを、クイズ形式に編集し、サーバに搭載した。これは、基礎的な知識を段階的に確実に習得してゆくステップバイステップな教育コンテンツとの利用が見込まれる。
ウェブセミナー用の動画コンテンツも搭載した。これはユビキタスに研修を受けることができる動画配信教育コンテンツ(ウェビナー)としての利用を具体化したものである。 病理検査での作業のスキルアップに役立てることが可能である。
比較的初学者でも学習しやすい教材を搭載した。脳の細胞病理には、神経細胞、グリア細胞など、細胞別の学習教材や、脳神経系の染色法の学習教材などを搭載している。神経疾患の病理については、てんかん、蛋白コンフォメーション病、脳腫瘍などの教材を搭載しており、これらは順次、追加して厚みのあるものにしてゆく。