脳神経解剖の基本

上位と下位の運動神経細胞

手足や顔の骨格筋を動かす神経細胞を総称して下位運動神経細胞と言います。その下位運動ニューロンに指令を出す神経細胞を上位運動神経細胞と言います。上位運動は一次運動野と言い、大脳の穹窿部(上のほう)にあるので、上位運動神経細胞と言います。この一次運動野は、神経解剖学的には中心前回、また、今説明してきたブロードマンによると4野とも言います。下位運動神経細胞は、この上位運動神経細胞の指令を受ける、大脳より下にある部位(脳幹や脊髄)にある神経細胞なので下位運動神経細胞と言います。

ここは大切な知識ですので、繰り返し、さらに詳しく説明します。運動の指令は3つのステップにより機能します。最初のステップは、一次運動野(中心前回、ブロードマン4野とも言う)にある上位運動神経細胞の突起(軸索)が、脳幹や脊髄にある下位運動神経細胞(動眼神経細胞核、顔面神経核、脊髄前角など)の神経細胞に投射するステップです。この投射の通り道を図で示す通り、錐体路と言います。

錐体路は延髄下部レベルで、左右が入れ替わります。このことを錐体交叉と言います。この交叉により、例えば左大脳の一次運動野からの指令は、脊髄レベルでは右側に伝達することになりますので、左に大きな脳梗塞が発生すると、右半身に障害がでることになります。さて、二つ目のステップは、下位運動神経細胞の突起(軸索)が顔や体の筋肉に投射するステップです。三つ目のステップは、一つ目と二つ目のステップによって指令が出された筋肉が実際に動くステップです。