第2章 筋疾患のアウトライン

神経原性筋萎縮

脊髄の運動ニューロン(脊髄の前角にある運動性神経細胞)または脊髄から出る末梢神経の障害により筋が萎縮する(やせる)状態を神経原性筋萎縮と呼びます。運動ニューロンが障害される病気(運動ニューロン疾患)の代表は筋萎縮性側索硬化症(ALS)ですが、それ以外にも、脊髄性進行性筋萎縮症(SPMA)と総称されるまれな疾患群があります。この病気は胎児から成人まで広い年齢で発症し、一般に若く発症した時には進行が速いという傾向はあるものの、進行性、重症度には個人差があります。この中には遺伝的素因のある病気が多いと考えられています。

脊髄性進行性筋萎縮症と症状や病態のうえで共通点が多い疾患に球脊髄型筋萎縮症(BSMA)があります。この病気の特徴は舌や喉の筋の萎縮が目立つ点です。また比較的早期から手指のふるえがみられ、しばしば男性にもかかわらず女性のような乳房(女性化乳房)を伴うことも指摘されています。この病気はX 染色体性劣性遺伝形式をとるため、原則として男性のみにおこります。

運動ニューロン疾患とならんで神経原性筋萎縮症をおこすのは末梢神経障害です。成人で頻度的に多い末梢神経障害に糖尿病性末梢神経障害や、アルコールや薬剤などによる中毒性末梢神経障害、各種の圧迫や外傷による末梢神経障害があります。また、そのほかに免疫的な異常にもとづく末梢神経障害(ギラン・バレ症候群や慢性炎症性脱髄性根神経炎)、遺伝性末梢神経障害(シャルコー・マリー・ツゥース病、家族性アミロイドニューロパチーなど)、膠原病などの内科疾患に伴う末梢神経障害、さらに悪性腫瘍にともなう末梢神経障害などがあります。

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