第1章 筋肉の働きとその障害

全身の筋肉をあわせると、筋肉は人体で一番大きな臓器です。人は筋肉を使って移動し、呼吸し、飲食します。筋肉の働きは脳から末梢神経にいたる神経系に制御されていますが、私たちの生活の大切な部分を筋肉が支えています。筋肉には骨格筋と平滑筋と心筋がありますが、このページでは主に骨格筋の病気について述べます。以下、骨格筋のことを”筋”とよびます。

筋の病気でおきる症状

筋の病気では、普通は力が弱くなり、筋がやせてきます。しかし日常生活で筋に特別に注意をしている方は少ないので、次のような症状が出現してはじめて異常に気づくのが普通です。

まず脚の筋のなかでも、体の中心に近い筋(近位筋)、つまり腰や大腿の筋が障害されると、立ち上がりや階段の昇降が不自由になりがちです。床や低い椅子からや、トイレなどで立ちあがるとき、あるいは駅の階段昇降やバスの乗降の時に、困難が生じます。他人からみると、一歩一歩左右の腰を交互に上下に揺らせて歩くような歩行がみられます。

一方、遠位筋すなわち膝より下の筋の力が落ちると、足が垂れ下がるために、足先がわずかな突起に引っかかりやすく、また階段を昇る時足先が垂れ下がった分だけ膝を高く上げなければならなくなります。さらにつま先立ちがしにくくなり、転びやすくなります。

腕の近位筋、つまり肩の付近の筋力が低下すると、重いものを持ち上げにくくなります。布団の出し入れや上にある棚への物の上げ下げが不自由になり、また女性では髪の手入れの間、腕を挙げていられないなどの症状が出ます。

一方、腕の遠位筋、すなわち手の筋力が落ちると、手に持った物を取り落とす、缶詰や瓶のふたを開けられない、タオルを絞れないなどの症状が出て、手の場合は筋が萎縮して手の甲に一本一本骨が浮き出て見えるようになったと気づく方もあります。

さらに、顔や首、背骨の周辺の筋が弱くなる疾患もあります。また目を動かす筋の障害による物が二つに見える(複視)が起きることがあります。

筋にはやせと力の低下以外に、筋に痛みが出たり、少数ですが局所的に肥大したり、また収縮後に弛緩しにくくこわばるなどの症状が出ることがあります。筋が部分的にぴくぴく収縮することは必ずしも異常ではありませんが、頻繁に起きる時には病的なこともあります。

▲ goto_top