筋の病気の中には大きく分けると筋自身に病気の原因があるものと、筋を動かす作用をしている神経系に原因があるものがあります。筋自身に原因のある病気をミオパチーまたは筋原性筋萎縮症、あるいは筋症と呼んでいます。一方、神経に起因するものは神経原性筋萎縮症と総称します。
脊髄にあって運動をつかさどる神経細胞である二次(下位)運動ニューロンが主に障害される運動ニューロン疾患と、それより末梢の神経が障害される末梢神経障害の二つに大別できます。運動ニューロン疾患の代表は筋萎縮性側索硬化症(ALS)ですが、この病気については別項でくわしく述べられていますのでご参照ください。末梢神経障害の原因は多岐にわたります。運動ニューロン疾患か末梢神経障害かを見分けることは臨床的に非常に重要で、このために電気生理学的検査と総称される針筋電図や末梢神経伝導検査などの検査その他の検査が行われます。
主なものには筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、炎症性ミオパチー (筋炎)および代謝性ミオパチーなどがあります。筋ジストロフィーと先天性ミオパチーは遺伝性の疾患で、とくに進行性が明瞭なものを筋ジストロフィー、それほど進行が目立たないものが先天性ミオパチーとおおまかに分類しています。
この二つの筋萎縮症を診察から確実に区別することはできませんが、次のような傾向があることから、ある程度は推測することができます。
その症状には、感覚障害(しびれや痛み、感覚の鈍い部位など)、筋の緊張の異常、反射の異常などがある。筋の一部が細かく引きつるように動く現象やふるえがみとめられることもある。
これ以外に、筋電図などの電気的な検査や、血液中に筋から移行するタンパク質を測定すると、より正確に区別ができます。まれにはこの二つの原因の両方が関与している場合もあります。