作製した病理標本をバーチャルスライド機器により高精度のホールスライドイメージ(Whole Slide Image:WSI)に変換し、サーバに搭載することにより「医学研・脳神経病理DB」を構築しています。デジタル化メソッドではWSIの作製法と、学習用コンテンツの加工法について紹介します。
※当施設のバーチャルスライド機器はAperio社のScanScopeを使用しています。
バーチャルスライド機器でスライドをスキャンする際に、表面が汚れているとうまく読み込むことが出来ません。そのため、前もってスライドを磨いて綺麗にしておきます。カバーガラスの表面に付着した余分な封入材は剃刀を使って削り落とし、純アルコールをしみ込ませたキムワイプで拭きます。
専用のホルダーにスライドをセットします。ホルダーには76×26(mm)のスライドが5枚セット出来るようになっています。
倍サイズの76×52(mm)のスライドがセット出来る特注ホルダーもあります。
バーチャルスライド機器の中には一度に100枚以上のスライドをセット出来るものもありますが、我々は診断用ではなく教材作製に使用しているため少ない枚数でスキャンするものを使用しています。
スキャンする範囲などを細かく設定すると、自動でZ軸補正をしながらライン状にスキャンをしていきます。通常は40倍でスキャンを行っています。高精細ゆえにスキャンにかかる時間は切手サイズの組織で、約30分程度、容量は1〜10GB程度となります。切片の厚みや凹凸、カバーガラスの些細な汚れなどで不良なデジタルデータとなってしまうため、注意が必要です。
スキャンしたWSIはScanScope専用のSVS(ScanScopeVirtuelSlide)形式で保存されます。この形式の画像はScanScopeでしか閲覧することが出来ませんが、ScanScopeの中で他の形式に変換することが出来ます。オリジナル画像をSVSからJPEGに変換した後に、サーバにアップロードし、ウェブで閲覧することが可能になります。
WSIにアノテーションを加え、さらにZoomify機能を追加することで学習効果の高いデジタル画像を作製しています。 SVSのオリジナル画像をScanScopeでTIFFに変換します。変換した画像データにPhotoshopで細かいアノテーション加工を施します。PhotoshopでZoomifyに書き出しを行うと、画像のJPEGファイルとHTMLファイルが書き出され、サーバにアップロード出来るようになります。
Zoomifyはユーザのブラウザで表示する画像の幅と高さをピクセル単位で設定することができ、ノートパソコンの利用者が多い事から600×600ピクセルのサイズに設定しています。