2019/10/11

☆び漫性軸索損傷

Tweet ThisSend to Facebook | by 新井 信隆
昨日のクルズスで、び漫性軸索損傷(diffuse axonal injury; DAI)を説明しました。このDAIは少しトリッキーな事があり、臨床(特に救急)の現場で臨床の先生が診断名として使うDAIと、死亡例での病理診断するDAIとでは、意味することがやや違います。

前者は、交通事故やその他の事故などで頭部外傷を受けて病院に運ばれた患者さんが、いろいろな検査(特に脳の画像検査)を受けた結果、特に出血や脳挫傷などがなさそうにも関わらず、意識障害や運動麻痺があって、重篤感がある、という乖離がある場合、脳梁などで軸索損傷があるに違いない、よって、診断はDAIとなるケースです。

しかし、その場合、必ず軸索損傷という器質的な変化がある、ということを意味しているわけではなく、もしかすると、深い脳震盪であって、軸索損傷という病理学的な変化はない(あるいはきわめて軽い)という場合もあり得るわけです。

一方、病理学的にDAIと診断するケースは、肉眼所見や顕微鏡で軸索に損傷病変がある場合に診断をするので、前者とはかならずしも、一致しない場合もあるわけです。また、脳梁というのは、ボリュームがある構造なので、全部が一気に壊れることはなく、外力の加わり方や強さなどによっては、病変は一部に限られる、ということもあるわけです。

司法解剖例などで、脳梁に損傷があるかどうか、というコンサルテーションを受けることがありますが、標本の数が不足していると、あっても見つけられないこともありますので、その辺の注意が必要かな、と思われます。
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