筋疾患の診察と検査

筋疾患の検査

骨格筋についての血液検査で重要なのは筋細胞の異常により細胞内から血液中に移行するいわゆる筋逸脱酵素で、その代表がクレアチン・キナーゼ(CK)である。この他にはアルドラーゼやアラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)などがあるが、特異性や感度の面で血清CK 活性が最も重要視されている。外来で測定したCK 値が微増の場合は、採血前の運動状況を確認することが望ましい。血液検査:膠原病や内分泌疾患、代謝疾患に合併する筋疾患ではそれぞれの疾患に関する検査が行われる。特に筋炎(炎症性筋症)に関しては筋炎特異的抗体(MSA)とよばれる自己抗体の有用性が、病型の決定や病因の解析に際して、増している。その中には限られた研究機関でのみ測定可能なものもあるので、可能であれば採血に際しては少量の血清を別途凍結保存しておくことが望ましい。

筋の画像検査には骨格筋CTが広く使われている。筋が萎縮とそれに伴う脂肪組織への置換が画像化できる。筋内の炎症などの変化は骨格筋MRI が有用で、炎症に伴う浮腫と脂肪化を区別するために必要に応じて脂肪抑制画像を併用する。

電気生理学的検査として重要なのは誘発電位と針筋電図であるが、前者には末梢神経伝導検査として運動および感覚性神経伝導速度、F波誘発試験など多くの種類がある。重症筋無力症をはじめとする神経筋接合部の疾患に対しては、連続刺激試験や単一筋線維筋電図が行われている。針筋電図検査では、安静時と随意収縮時の筋からの放電を記録する。神経原性筋萎縮では、随意収縮時に運動単位脱落にと、それに続く残存運動単位の代償的な拡大を反映して、運動単位活動電位の放電頻度の減少とともに、電位自体の増高と持続時間の延長を認める。また安静時には、特に前角細胞を障害する運動ニューロン疾患では、自発的な放電が出現しやすい。一方、筋原性筋萎縮すなわちミオパチーでは筋線維自体の萎縮と変性を反映して、運動単位活動電位の減高と持続時間の短縮、および弱収縮を試みた段階で全線維の活動が動員される、早期リクルートメントがみとめられる。しかし、自発放電も出現することがある。

筋ジストロフィーをはじめとする遺伝性筋疾患のなかで、血液や筋組織から分離した核酸を材料とする遺伝子解析が診断上欠かせない疾患が増加している。患者さんのみの解析についてご本人の同意が得られている場合は実施に問題は少ないが、保因者や家族の解析については、十分な慎重さが要求される。ケースバイケースの判断が必要であるが、胎児診断などの特殊な場合を除き、未成年者や症状のない方の解析は原則として行っていない。

▲ page_top