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第103回 日本病理学会総会
脳神経病理データベースを利用した
脳神経リモートパソロジー実習

新井信隆1)4)5) 福田隆浩2) 宍戸-原 由紀子3) 菅間博3) 瀧本雅文4) 青木一郎5) 佐々木惇6)
関絵里香1)  江口弘美1)  植木信子 1)八木朋子1) 山下常美1) 赤沢年一7)

1)東京都医学総合研究所・神経病理解析室 7)同・情報システム室 2)東京慈恵会医科大学・神経病理学研究室 3)杏林大学医学部・病理学教室 4) 昭和大学医学部・臨床病理診断学講座 5)横浜市大・分子病理学 6)埼玉医科大学・病理学教室

目的

東京都医学総合研究所は、平成23年4月に医学系3研究所が統合した新しい研究所であり、神経病理解析室は、都立病院等と連携して脳神経病理診断の精度向上への寄与を目標に掲げた活動を展開している。本解析室には、約5,000例のヒト脳神経疾患の病理標本やブロック、付随する資料などのリサーチリソースがあり、各種神経疾患の病態解明の研究に加えて、医師の専門医取得等の研修や生涯研修に適宜活用している。現在これらの標本をバーチャルスライド機器により高精度スキャンし専用サーバに搭載することにより、「東京都医学研・脳神経病理データベース」を構築しており、運用のひとつであるe-ラーニングの仕組みを充実させることを目的としている。

方法

脳神経系標本をバーチャルスライドでデジタル化した1,000画像のうち、医学部教育に資すると思われる画像を搭載する、各医学部の担当教室の個別グループルームを脳神経病理データベースの専用サーバ内に開設し、適宜、担当教室での実習の際に、グループルームにアクセスしてPCモニター上で実習を行った。

脳神経リモートパソロジー実習の仕組み

結果・考案

利用した学生数は70名から130名程度であり、ひとりづつ個別のアカウントを発行した。実習形態は、学生にPCが割り当てられる視聴覚室のような部屋を実習会場とした場合、および、学生ひとりひとりに自身のノートパソコンを持参させて実習する場合など、大学における実習室の環境に応じて臨機応変に実施した。LAN回線はおおむね100Mbpsであった。画像のファイルサイズはおおよそ10〜40GBであった。データベースサーバ側におけるストレステストでは、全員が同じ画像にアクセスしても、特に負荷過剰の状態にはならなかった。一方、実習側のPCモニターによっては、タイリング状態のままフリーズするPCも発生するなど、大学側のLANやPCのスペックにより利便が左右されることが懸念されたが、環境さえ整えば画期的な神経病理のeラーニングシステムとなることが確認された。

実習コンテンツの抜粋

横浜市大分子病理学講座

特色:視聴覚教室での実習。学生数は70名。共通仕様のパソコンであるので、スペックの違いによる“不公平感”は少ない。内容は比較的平易。10問の小テスト、ウェブ上でのレポート提出あり。

東京慈恵会医大神経病理学研究室

特色:視聴覚室での実習。学生数は106名。内容は非常に高度で広範囲に渡る。神経病理学研究室が主催するために要求度は高い。テストは約70問。

昭和大学医学部臨床病理診断学講座

特色:各自ノートパソコン持参。学生数131名。講義資料(パワーポイント)も搭載。観察対象の正常組織のバーチャルスライドも搭載。バーチャルスライドでの観察領域も狭くし、また、神経解剖の解説も閲覧できるようにしており、現在のシステムで最も“迷子”にならないアップグレード版になっている。

杏林大学医学部病理学教室

特色:コンピュータールームで実習。学生数は約100名。筋疾患も含み、比較的幅広い疾患をカバー。テスト内容も豊富で充実している。

埼玉医科大学病理学教室

特色:現在システム利用をトライアル中。

結語

本システムはユビキタスな教育・研修ツールとして十分に活用できると思われた。今後の課題は、受講側としては、ANケーブルが100Mbpsでは対応できない状況も予想されるので、その点のインフラの改善がある。しかし、一カ所で全員が同時に実習するスタイルを取らなければ、それほど問題ではないと思われる。コンテンツの提供側の課題は、初学者が初めて利用しても“迷子”にさせない使い勝手のよさが求められる。コンテンツが充実するばかりに傾注して、この点についての工夫を疎かにすると、本末転倒になる危惧がある。多くのユーザーにモニターになっていただき、よいe-ラーニングシステムに発展させてゆきたい。