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第7回東京都福祉保健医療学会
脳神経病理デジタルデータベースのユビキタス活用法
〜教育・研修・診断支援ツールの開発〜
東京都医学総合研究所・脳病理標本リサーチセンター・デジタルパソロジーステーション
新井信隆、江口弘美、小森隆司、石原健司、赤沢年一、植木信子、八木朋子

脳神経疾患の病理・画像情報の本邦最大のデータベース活用による医療の格差是正

東京都医学総合研究所は、39年の歴史のある東京都神経科学総合研究所、東京都精神医学総合研究所、東京都臨床医学総合研究所が改組された研究所として平成23年4月に新たなスタートを切り、約5000例にのぼるほぼすべてのカテゴリーのヒト脳神経系の病理標本を所蔵する脳病理標本リサーチセンターを立ち上げた。加えて、平成18年から厚労省の施策として全国のがん拠点病院に順次導入されている高精度スキャナ(バーチャルスライド機器)を研究所に導入し、豊富な病理標本をデジタルデータベースへと質的大転換を果たす取り組みを行ってきた。これらの情報は、総務省が主導する情報通信技術(information and communication technologies; ICT)の戦略の成果により、ユビキタスな環境で利活用することが可能となっている。本データベースはこれら三位一体の取り組みの成果物として、内外を通じて比類ない脳神経系疾患の教育・研修・診断支援ツールとして成長している。

【方法・対象】

  1. 旧神経研所蔵の約2,000例の疾病構造を新しい疾病分類で再整理。神経変性疾患の多くで解明されつつある病態関連蛋白(リン酸化タウ、αシヌクレイン、ポリグルタミンなど)の蓄積を指標として後方視的に再診断。
  2. 夏のセミナーなどの企画で、実際のガラス標本、デジタル顕微鏡画像、バーチャルスライドによる高精度デジタル画像の質などを検証。
  3. 画像データを所内サーバーに蓄積し、疾病カテゴリー別に整理したデータベースを作成し利便価値を検証。

脳病理標本室(脳標本、ブロック、資料が電動棚に保管され、入退出は厳重な ID認証の管理システムで制限されている

バーチャルスライドシステム(スキャナ、ハードディスク、PC、モニター)を2台稼働させて、ガラス標本をデジタル化している(個人情報は秘匿)

インターネットを介した脳神経疾患の学習コンテンツのユビキタスツールに変身

【結果】

さらに深化・進化し、データベースホームページ内に一般の方でも理解が可能な脳の病理や神経疾患の解説ページを充実させた。また、データベースには約800コンテンツの画像を搭載し順次アップロードをしている。直近3ヶ月のアクセス解析では、19カ国(本邦330都市)から6,209アクセス・27,696ページビューがあり、検索エンジンにより到達する様々な潜在的ニーズがあることを確認し得た。機器そのものによるバク(不具合)はすでに技術的に克服し、また、マウス・トラックパッドなどの操作によるコンピュータモニター上での観察もストレスフリーな環境を実現していることを確認した。

e-ラーニングシステムによるヘルスサイエンス情報の質と供給の均霑化

【考察】

これらデジタルデータの利用の特徴は自宅、職場、外出先などの居場所に関わらず、ウェブにアクセスできる環境であれば、いつでもどこでも、バーチャルな顕微鏡体験ができるユーザビリティーのポテンシャルの高さである。今後、神経画像やその他の検査法などの教育コンテンツを充実させることにより、利活用価値の高いデータベースに発展してゆく。利用者対象としては、医療系学生、東京医師アカデミーなどの研修医・専門医を目指す医師、コメディカルスタッフ、脳神経系の研究者、一般人など幅広いことが想定される。また、病理医の電子教科書としての活用法もあり、医療の質の病院間格差・地域間格差を是正するシステムとしても利用価値は高い。