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第43回日本医学教育学会大会
脳神経病理画像データベースの遠隔教育活用法
東京都医学総合研究所・脳病理標本リサーチセンター
新井信隆、江口弘美、小森隆司、植木信子、八木朋子

東京都医学総合研究所・脳病理標本リサーチセンターとは?

当センターの研究資産を医学教育に活用させたい

【目的】

東京都医学総合研究所は、39年の歴史のある東京都神経科学総合研究所等が改組された研究所として平成23年4月に新たなスタートを切り、約5000例のほぼすべてのカテゴリーのヒト脳神経系の病理標本を所蔵する脳病理標本リサーチセンターを立ち上げた。第41回の本学会では、これらの分子病理的な分類によるコレクションの構成を紹介し、将来の教育ツールとなり得るデジタルパソロジーデータベース事業の展望を概説した。本発表では、その後今日に至る取り組みにより、医学研・脳神経病理データベースを立ち上げた現状を概説する。

【方法】

所蔵する脳病理ガラス標本をバーチャルスライド機器(アピリオテクノロジーズ社)により高精度スキャンをした画像データを、所内サーバーに蓄積し疾病カテゴリー別にアップロードしたデータベースを作成した。そのコンテンツの中に「教育的デジタル画像」のログインサイトを作成し、外部からのアクセスによる画像供覧のバグ、使い易さなどを検証した。

医学研・脳神経病理データベースを構築中

【結果】

教育的デジタル画像のサイトでは 「神経系の染色」、「免疫染色」 、「脳各部位の正常と異常」、「神経疾患」の4チャプターを作成し、各論では運動ニューロン疾患、タウオパチー、シヌクレイノパチー、トリプレットリピート病、TDP-43プロテイノパチーなど、13項目のチャプターを作成した。 外部アクセスのトライアルでは、受信側のハブやコンピュータモニターの仕様(新旧)により画像位置・倍率などのバーチャル検鏡操作に差異があり、今後の検討課題と思われたが、リアル体験(実際の顕微鏡実習)に引けをとらぬユビキタスな教育ツールとして活用できることが明らかとなった。

ユビキタス遠隔病理実習システムが医学教育、医療の格差を是正する

【結論】

医学研・脳病理画像データベースは医学生、研修医、シニア医師の卒後教育など、さまざまなニーズに対応できるコンテンツの豊富さが特徴であり、医療の地域間・病院間格差の是正に資するツールとなりうる。今後、様々な教育・研修に貢献するミッションを果たすべく、具体的な運用について多くの大学や学会などとの連携を推進したい。

(1)バーチャルスライドによる脳病理画像データベースの活用法

遠隔地から医学研のデータベースサーバーにアクセスすることにより、定型的な所見を閲覧して正しく診断することにより、①遠隔病理診断(テレパソロジー)の支援ができたり、②病院・研究所・大学などでの教育・研修に役立つ利用が可能となる。

(2)医療の地域間・病院間格差が増大している

医療の地域間格差、病院間格差は近年著しく、高度な専門的技術や患者受診は一部の専門医療施設に集中し、病院ランキングなどの情報がそれに拍車をかけている。特に脳神経系疾患では顕著であり、たとえば脳腫瘍ひとつとっても、脳腫瘍のタイプ別に専門病院が分化してしまっているのが現状であり、都市型の大規模総合病院であっても、脳腫瘍の全般的な医療供給、専門医研修、研究を行うことはもはや不可能といっても過言ではない。従って、診断する専門家も育たず診断精度の均霑化に大きな支障が全国的規模で生じている。そのような分野における専門的な知識と経験を有する病理系の研究員が果たすべき役割は、診断精度にかかわる研究活動とその成果の普及活動によって果たされる。 研究成果をデジタル化し医療の標準化に資するデバイスなどの開発と応用が一層求められるのは、このような背景からの必然でもり、資産を保有している医学研のミッションでもある。

(3)様々な教育・研修に貢献するミッション

医学部教育は平成16年度から段階を経て変貌を遂げており、臨床主導のコアカリキュラムに移行した結果、実習時間の減少や機器(顕微鏡)の不備などにより、病理などの基礎科目の習得がおろそかになっている危惧がある。それらを打開するためのユビキタス・デジタルツールとして本データベースの役割は大きい。