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脳腫瘍

鑑別診断

転移性脳腫瘍

転移性脳腫瘍は原発性脳腫瘍よりも頻度が高く、成人の大脳半球に限れば、肺癌、乳癌、大腸癌などが上位を占める。硬膜や髄膜には乳癌、前立腺癌、肺癌の転移が多く、髄膜癌腫症は肺癌が多いとされる。大腸癌は単発であることが少なくないが、肺小細胞癌、乳癌、悪性黒色腫などは多発性であることが多い。

組織学的に、癌腫では充実性あるいは胞巣状の増殖を示すことが多く、広範な壊死が目立つ。脳実質との境界は明瞭で圧排形式をとるが、境界が不明瞭で浸潤様に見える場合もある。周辺には反応性アストロサイトの増勢が顕著で、炎症細胞浸潤がみられることも多い。癌腫の鑑別にはcytokeratinやEMAなどの上皮マーカーが有用であることは云うまでもないが、cytokeratinのカクテル抗体の一部(AE1/AE3など)はGFAPと交差反応を示すことが知られている。低分子ケラチン(CAM5.2)やCK7/20の組み合わせを利用するか、臓器特異性の高い抗体(TTF1など)の使用が推奨される。

多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)

通常型のMSでは増悪と緩解を繰り返すことは良く知られているが、稀に、急激に症状が悪化する大型で癒合性の脱髄斑を伴うMSはacute MS(またはマールブルク型)と呼ばれる。浮腫が強く、腫瘤様の圧排所見を示す場合には、tumefactive MSと呼ぶこともある。いずれも高齢者にも起り得るため、膠芽腫との鑑別が問題となる。組織学的には壊死傾向が強く、軸索の障害が顕著であるが、基本的な所見は通常型の脱髄斑と同じである。脱髄斑にはマクロファージのシート状浸潤と血管周囲のリンパ球浸潤が必発である。多核で異型を伴った大型の反応性星細胞やマクロファージの異型分裂像もみられる。適切な髄鞘染色によって髄鞘の染色性の完全消失を確認し、Bodianなどの鍍銀(軸索)染色やneurofilament protein免疫染色で軸索の相対的残存を確認する。

感染、炎症性疾患など

画像でリング状の造影効果を示す病変として脳膿瘍は有名である。中枢神経組織は細菌に対して抵抗性を有しているので、細菌感染症はウイルス感染の様にびまん性脳炎を来すことはなく、限局性病変を呈する。実質内の細菌感染症は血行性のことが多く、血管壁の破綻による限局性の病変から周囲に反応性グリアを伴った膿瘍に至る。中枢神経系の炎症性疾患は髄膜病変を伴った表在性病変であることが多い。特異的な所見がない場合には診断に苦慮することが少なくない。