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脳腫瘍

神経上皮腫瘍

星細胞系腫瘍(概論)

星細胞系腫瘍は小児では最も多く、成人では下垂体腺腫を除くと髄膜腫についで多い。小児や若年成人では低悪性度の膠腫が、高齢者では膠芽腫が多い。星細胞系腫瘍は浸潤性星細胞腫と特殊型として良性の限局性星細胞腫とに大別する。限局性星細胞腫は遺伝学的にも浸潤性星細胞腫と異なった腫瘍と考えられる。浸潤性星細胞腫は、先に述べた退形成性の指標に基づいてgrade IIからIVを付与する。Grade II、III、IVの浸潤性星細胞腫を、それぞれびまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、膠芽腫と呼ぶ。この3者は別々の腫瘍ではなく、遺伝子学的異常が加わるたびに悪性度が上がり、やがては膠芽腫に悪性転化する一連の腫瘍でと考えられている。

一方、初発時(de novo)から膠芽腫の所見を呈する群もあり、1次性膠芽腫(primary glioblastoma)と呼ぶ。悪性転化して生じたものは2次性膠芽腫(secondary glioblastoma)と呼ぶ。両者は遺伝学的には全く異なった腫瘍で、近年、浸潤性星細胞腫と乏突起膠腫に共通の遺伝子異常として同定されたIDH-1遺伝子変異はprimary glioblastomaには認められない。

限局性星細胞腫

毛様細胞性星細胞腫(Pilocytic astrocytoma);WHO Grade I

主に小児や若年成人の小脳、第3脳室近傍、視神経、脳幹などに発生する。近年、BRAF遺伝子に特有の異常が同定され、浸潤性星細胞腫と遺伝学的にも異なることが明らかとなった。組織学的には、毛髪様の細長い突起をもつ双極性細胞が束状に増生する充実性部分と、微小嚢胞性基質に星芒状の腫瘍細胞が疎に配列する海綿状部分からなる二相性構築が特徴的である。小脳ではしばしば海綿状の疎な背景に希突起膠腫によく似た類円形細胞が増生する。大脳半球では稀で充実性部分が主体となるため、びまん性星細胞腫との鑑別が難しい。

充実性部分にはローゼンタール線維(Rosenthal fiber)が、海綿状部分には好酸性顆粒小体(eosinophilic granular body)がみられる。GFAPは通常充実部分に強く発現している。本腫瘍の組織所見は多彩で、核の大小不同や多核細胞の存在に加え、微少血管増勢、血管壁の硝子化、凝固(虚血性)壊死などが認められる。くも膜下腔への進展も時に観察される。分裂像は稀である。このような所見は悪性を示唆するものではなく、退行性変化の一種と考えられる。

多形黄色星細胞腫(Pleomorphic xanthoastrocytoma、PXA):WHO Grade II

主に小児や若年成人の大脳表面に発生する比較的予後が良好な限局性星細胞腫で、嚢胞を伴うことが多い。組織学的には紡錘形細胞が束状ないしは花筵状に増勢する細胞密度の高い腫瘍で、一部に脂肪滴を入れた大型で多形性と異型性の強い腫瘍細胞(xanthomatous cells)の混在が特徴的である。血管周囲のリンパ球浸潤や好酸性顆粒小体を伴う。この腫瘍はもともと肉腫の中から、GFAP陽性で予後良好な腫瘍として分離されたものである。組織所見の幅が大きく、診断の難しい腫瘍である。

Xanthomatous cellsは目立たないことも少なくないが、好酸性顆粒小体や好銀線維を伴う線維形成(desmoplasia)の頻度は高い。但し、desmoplasiaは脳表に近い部位で顕著であり、脳実質内の浸潤部位では欠如することもある。好酸性顆粒小体は緩徐な発育を示す腫瘍にみられる非特異的所見であるが、90%以上の症例に認められる重要な副所見である。少数の腫瘍細胞が様々な神経マーカーに陽性になることがあり、診断上有用である。細胞密度は比較的高いが、細胞の多形性に比較して分裂像は乏しく、Ki-67標識率は1から3%程度で、壊死はみられない。核分裂像が多く(≥5/10HPF)、血管増勢や壊死などの悪性像がみられる場合には、PXA with anaplastic featuresの名称を用いるが、生物学的悪性度はいまだに不明である。

浸潤性星細胞腫

びまん性星細胞腫(diffuse astrocytoma):WHO Grade II

成人の大脳半球に好発する腫瘍で小児では脳幹に多い。境界不鮮明な灰白色調の充実性増殖を示し、時に嚢胞を形成する。腫瘍の中心部では充実性の増殖を示すが、周辺部では腫瘍細胞が神経束に沿って既存の組織を破壊することなく浸潤する。

組織学的には正常の星細胞の形態に沿って伝統的に3つの亜型に分類する。好酸性の細胞質と細胞突起を有する単紡錘形の核を持った原線維性(fibrillary astrocytoma)が基本形で、小型類円形核を有する星芒状細胞が微少嚢胞状基質に増殖する原形質性(protoplasmic)、偏在する核と好酸性の豊富な細胞質を有する肥胖細胞性(gemistocytic)に分ける。しかし、実際にはこれらが混在していることが多く、純粋な原形質性星細胞腫は存在しないとされる。腫瘍細胞の胞体と突起はGFAP、vimentin、S-100蛋白に陽性である。肥胖細胞性は腫瘍細胞の一定部分が肥胖細胞で占められている場合に診断し、この亜型は核分裂像が乏しいものの悪性転化を来しやすい。

退形成性星細胞腫(anaplastic astrocytoma):WHO Grade III

びまん性星細胞腫の所見に明らかな退形成性と有意な核分裂像が加わった場合に診断する。退形成性は核の明らかな異型性と細胞密度の上昇をもって判定する。細胞密度が低い場合でも、核異型が明らかで、有意な核分裂像があればgrade IIIとする。核分裂像について、現行のWHO分類では数値が明示されていないが、針生検では標本内に1個の分裂像があれば有意とし、切除標本では少なくとも複数個が必要とされる。最初の強拡大10視野に1個以上の場合は有意に予後が悪いとの報告もある3)ので、任意の強拡大10視野に2個以上あれば有意と考えられる。

膠芽腫(glioblastoma):WHO Grade IV

現行のWHO分類で膠芽腫は最も悪性の星細胞腫と定義されている。肉眼的には大脳白質を中心に、壊死や出血が混在した多彩な像を示すため多形膠芽腫(glioblastoma multiforme)と呼ばれてきた。脳梁を介して対側の白質へ浸潤する蝶形パターン(butterfly pattern)は特徴的であり、その他に上衣下脳室壁浸潤あるいは髄液播種を来しやすい。

組織学的に細胞密度は高く、顕著な核あるいは細胞の多形性を示す。多形性は本腫瘍に診断に必須ではなく、退形成性星細胞腫の所見に壊死または微小血管増勢を伴った場合に診断する。腫瘍細胞は比較的単調な髄芽腫様の小型円形細胞に至るまで多様な形態を呈しうる。壊死巣周囲の核の柵状配列(pseudopalisading necrosis)や糸球体係蹄様構造(glomerular structure)を呈する微少血管増勢が特徴的である。腫瘍細胞はGFAP、S-100蛋白陽性であるが、GFAPの発現が乏しい場合も少なくない。Ki-67標識率は20%に達する。

膠芽腫には幾つかの亜型や組織パターンが知られている。

表2 Glioblastoma (GBM) の亜型および組織パターン(Perry & Brat5) Box 5-1より改変)
Giant-Cell GBM
  1. 豊かな細胞質をもった異型性・多形性の著しい単・多核巨細胞
  2. Often deceptively circumscribed grossly
  3. 一部はやや予後良好
Gliosarcoma
  1. グリア系と間葉系の腫瘍成分がモザイク状に混在
  2. 間葉系成分は化生と考えられている(同一の遺伝子異常を共有)
  3. 間葉系成分は線維肉腫様が多いが、骨、軟骨、脂肪、筋肉への分化を示す例もある
  4. 表在性で境界明瞭
  5. 予後と治療反応性は通常のGBMと変わらない
Epithelioid GBM
  1. 通常のGBMやgliosarcomaの領域が存在
  2. 上皮様、腺管様、扁平上皮様、rhabdoid様などの領域が存在
  3. 同領域はcytokeratin陽性、GFAP陰性
  4. 若年者に多く、予後不良
Small-Cell Astrocytoma/GBM
  1. 細胞質の乏しいクロマチンに富んだ小型類円形細胞
  2. 核周囲ハローを伴う場合には乏突起膠腫に似る
  3. 多数の分裂像と高い増殖能を示す

乏突起膠細胞系腫瘍(概論)

乏突起膠腫は、正常の乏突起膠細胞に形態が似ていることから命名された腫瘍である。しかし、乏突起膠腫には乏突起膠細胞に発現している遺伝子やタンパクの発現が不明瞭で、現在もその起源は確定していない。また、特異的なマーカーがないことから、専門家の間でも診断が一致しないことが少なくない。近年、乏突起膠腫には1番染色体短腕1pと19番長腕19qの共欠失が高頻度で認められ、かつ、同欠失を有する症例は化学療法に対する感受性が高く、生命予後が良好であることが明らかとなった。古典的乏突起膠腫の組織像を呈する腫瘍の約80〜90%に共欠失が存在することが確認され、定型的組織所見と共欠失の両者を備えた腫瘍は乏突起膠腫の中核をなすと考えられる。

この群の腫瘍には大きく2つの腫瘍型、乏突起膠腫(oligodendroglioma)と乏突起星細胞腫(oligoastrocytoma)の2つがある。しかし、どの程度の星細胞分化が存在すれ乏希突起星細胞腫の診断を付けるのか、明確な基準は呈示されていない。特に両者が混在する混在型の診断は難しい。星細胞分化の有無と予後には相関性はなく、乏突起膠腫の領域と星細胞腫の領域では遺伝学的な異常が共通であったとの報告もあり、両者は単一のクローン由来であるとの考え方が優性である。

乏突起膠腫(oligodendroglioma):WHO Grade II

成人の大脳半球、特に前頭葉に好発する良く分化した小型円形細胞からなる浸潤性腫瘍。小脳、脳幹には極めて稀である。小児には少なく、小児例では共欠失することが多い。

びまん性に浸潤する腫瘍であるが、緩やかな小結節を作る傾向があり、特徴的である。腫瘍は核周囲ハローを有する良く揃った小型円形細胞からなる。ハローは人工産物であり、凍結切片では欠如し、固定条件によっては目立たないこともある。基質に好塩基性物質が沈着して微小嚢胞性変化を来すことがある。細胞境界が際立っている場合には、目玉焼き像(fried egg appearance)と呼ばれる。微細血管網は分岐と吻合を示し、鳥小屋の金網状(chicken wire pattern)と表現される。灰白質では既存の毛細血管と区別が付き難い。石灰化は腫瘍の周辺部に目立つことが多く、重要な副所見である。

腫瘍細胞はS-100蛋白、Olig2に高頻度に陽性でGFAP、vimentin陰性である。Olig2は星細胞腫でも陽性細胞が混在しているので、特異的ではない。核が偏在した好酸性の腫大細胞をmigigemistocytesまたはmicrogemistocytesと呼び、GFAP陽性である。また、類円形核を有し、細胞質が乏しく短い細胞突起を伴うGFAP陽性細胞をgliofibrillary oligodendrocytesと呼ぶ。これらのGFAP陽性細胞は星細胞分化とは判定されない。また、乏突起膠腫の周辺部や小結節間には反応性の星細胞が多量に出現することがあるので、これらも星細胞分化としない。退形成性変化が強くなってくると、核は丸みを失い、星細胞と区別の付かない細胞の割合が増加してくる。取扱い規約第3版ではおよそ10%以上にいずれかの成分が含まれていれば、乏突起星細胞腫とするとの目安を設けている。核分裂像は乏しく、Ki-67標識率は5%以下であることが多い。

退形成性乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma):WHO Grade III

退形成性の規定は星細胞系腫瘍に準じ、細胞密度の増加、核異型、核分裂像の増加をもって総合的に判断する。星細胞腫に比べると核分裂像が目立つ腫瘍であるので、強拡大10視野当り6個以上とする報告もある4)。なお、退形成性乏突起星細胞腫に壊死が存在する場合は、予後が膠芽腫に匹敵することが報告され、現在では膠芽腫の亜型に分類されている(glioblastoma with oligodendroglioma component)。

上衣細胞性腫瘍

上衣腫(ependymoma):WHO Grade II

小児と若年成人に多いが、あらゆる年齢層に発生する。第4脳室が好発部位であり、脊髄にも多い。脳室壁から実質内に発育する比較的境界明瞭な腫瘤を形成する。いくつかの亜型があるが、生物学的悪性度に差はない。

組織学的には比較的均一な類円形核と境界の不明瞭な弱好酸性細胞質を持つ細胞が増殖する。腫瘍細胞が血管壁に単極性の細胞突起を伸ばした血管周囲性偽ロゼットが特徴的である。血管周囲性偽ロゼットは、膠腫の2次構築であるgliovascular structureの特殊型に過ぎないが、診断上の有用性は高い。一方、腫瘍細胞が形成する管腔は上衣腫として最も特異的な変化である。腔の大きさに応じて上衣ロゼット(ependymal rosette)や上衣管(ependymal canal)などと呼ばれる。その他、細胞質内に形成される多数の微絨毛を含んだ微少管腔は特徴的な所見で、光顕的には細胞内の好酸性顆粒として観察され、診断的価値が高い。

免疫組織化学的に、GFAPは血管周囲性偽ロゼットの細胞突起部分(いわゆる無核帯)に強陽性になる。EMAは管腔に面する細胞膜と細胞質内の好酸性顆粒に陽性となる。その他にvimentinやcytokeratinなどの上皮マーカーが陽性となる。

退形成性上衣腫(anaplastic ependymoma):WHO Grade III

明らかに退形成所見を認める場合に診断する。退形成所見は星細胞腫に準ずる。Ki-67陽性率は10%以上を示す。希突起膠腫と同様に限局傾向があるためか、星細胞腫に比べると予後が良い。このためGrade IVは設けられていない。

脈絡叢腫瘍

脈絡叢乳頭腫(choroids plexus papilloma):WHO Grade I

小児の側脳室に好発する良性腫瘍。成人では第4脳室に発生する。脳室壁に付着し、カリフラワー状と表現される赤色顆粒状の腫瘤を形成する。組織学的には脈絡叢の構造を模倣した単層立方上皮ないしは偽多層円柱上皮からなり、血管を軸とした狭い間質に沿って乳頭状に配列する。免疫組織化学的にはS−100蛋白、cytokeratinに加えtransthyretin(prealbumin)が陽性となる。本腫瘍には悪性型である脈絡叢乳頭癌(choroid plexus carcinoma)(WHO Grade III)が小児で稀にみられる。中間型の異型性を示す症例(WHO Grade II)もあって診断基準は明確ではない。成人では乳頭状腺癌の転移との鑑別が問題となる。

神経細胞系および混合神経細胞・膠細胞腫瘍

混合神経細胞・膠細胞腫瘍は分化した神経系細胞と膠細胞からなる中枢神経系の混合性腫瘍とである。分化した神経系細胞のみからなる神経細胞系腫瘍も限局性の膠細胞成分を伴うことが多く、通常は一括してglioneuronal tumorまたは神経細胞系腫瘍と総称される5)。膠細胞成分は大多数が星細胞である。神経細胞成分は、小型の神経細胞(neurocyte)と大型の神経節細胞(ganglion cell)に大別される。神経細胞系腫瘍は一部を除き良性腫瘍である。通常は外科的切除のみで予後良好であり、従って不必要な治療を避ける上で的確な組織診断が求められる。

神経節細胞腫(Gangliocytoma)・神経節膠腫(Ganglioglioma):WHO Grade I

良く分化した神経節細胞から構成され、混在する膠細胞の密度が低く非腫瘍性と考えられる場合には神経節細胞腫、膠細胞の密度が高く異型性がある場合には神経節膠腫と診断する。両者の境界は判定困難なことも少なくないので、両者を合わせてganglion cell tumorsと呼ぶこともある。 本腫瘍の診断には、神経細胞の異形成性を同定することが必須となる。神経節細胞はニッスル顆粒の存在が最も特徴的で、明瞭な核小体と均一なクロマチン、豊富な細胞質を有する。2核の細胞や異型の強い大型細胞、配列の異常、極性の消失、細胞質の腫脹、巨大化、核の偏在などの細胞異型などが参考となる。膠細胞要素は星細胞で、毛様細胞性星細胞種の組織像を呈することがある。器質は疎な線維状から密な紡錘形の突起からなる花筵状を呈し、しばしばdesmoplasiaがみられる。神経節膠腫はくも膜下腔に進展しやすいが、これは悪性化を示す所見ではない。血管周囲のリンパ球浸潤、星状膠細胞の好酸性顆粒小体は特徴的である。免疫組織化学ではsynaptophysinの膜様陽性像とchromogranin Aが神経節細胞の同定に有用である。Ki-67標識率は1-3%である。

中枢性神経細胞腫(centra1 neurocytoma):WHO Grade II

若年成人の側脳室前半部に発生する小型神経細胞性腫瘍。組織学的には均一な核周囲明暈を伴った小型円形細胞が敷石状に配列し、しばしば希突起膠腫によく似た蜂巣様構造を示す。特徴的な所見として不規則な島状の無細胞領域を腫瘍細胞が取り囲む像がある。これは一種のロゼットであり、neuropil islandと呼ばれる。免疫組織化学的には小型細胞核はNeuNに、neuropil islandはsynaptophysin陽性となる。一部に再発する例がある。

胚芽異形成性神経上皮腫瘍(Dysembryoplastic neuroepithelial tumor, DNT):WHO Grade I

小児や若年成人の大脳皮質内の結節性構築を特徴とする希突起膠細胞によく似た小型円形細胞oligodendroglia-like cell(OLC)から構成される神経上皮性腫瘍。しばしば皮質形成異常を合併する。一般に20才以下に発症した難治性てんかん患者とされているが、成人例や初発のてんかん発作で発見される症例も増加している。

典型的なDNTは大脳皮質内に限局した1ないし数個の結節状ないし斑状の病変から形成され、周囲の皮質形成異常と共に病的に拡張した皮質を形成する。組織学的には粘液を入れた小嚢胞状基質に希突起膠細胞に似た類円形の中心核と淡明な細胞質からなるOLCが毛細血管や神経突起に沿って配列し、粘液様基質の中には‘浮かぶような’神経細胞が混在する“specific glioneuronal element”が特徴的とされる。浮遊神経細胞は神経節膠腫に認められる神経節細胞とはことなり、異型性を欠き、大きさは正常の神経細胞と変わらない。免疫組織化学的にOLCの多くはsynaptophysinとGFAPに陰性でS-100蛋白陽性である。Ki-67標識率は1%以下である。DNTは腫瘍が増大することのない過誤腫的腫瘍と考えられ、生命予後は極めて良い。

松果体実質腫瘍

松果体部には様々な腫瘍が発生するが、松果体固有の細胞から発生すると考えられる腫瘍を松果体実質腫瘍と呼ぶ。これには松果体組織を模倣した分化型の松果体細胞腫と松果体としての構造を失った未分化型の松果体芽腫がある。さらに両者の中間的な分化度を示す中間型松果体実質腫瘍がある。

松果体細胞腫(pineocytoma):WHO Grade II

年齢差は乏しく、境界鮮明な充実性腫瘤を形成する。組織学的には均一な類円形核を持つ腫瘍細胞が線推性基質を伴って増殖し、血管結合織によって区画された松果体組織類似の分葉構造を示すことがある。本腫瘍に特徴的な所見としてpineocytomatous rosetteと呼ばれる大型のロゼットがある。ロゼット内には鍍染色で細胞突起の先端がゴルフクラブ状に腫大する所見(club-like expansion)がみられる。腫瘍細胞および基質は種々の神経マーカーに陽性となる。

松果体芽腫(pineoblastoma):WHO Grade IV

松果体芽腫は髄芽腫を含めた未分化な神経上皮性腫瘍と同様に、クロマチンに富んだ類円形核と乏しい細胞質を有する小型円形細胞の充実性増殖からなり、Homer WrightロゼットやFlexner-Wintersteinerロゼットなどがみられる。高頻度に播種する悪性腫瘍である。組織学的な分化度と予後が必ずしも相関せず、悪性度の判定が難しい腫瘍である。

胎児性腫瘍

未分化な神経上皮性細胞が、胎生期の神経組織を模倣した構築を示す悪性腫瘍である。小児に好発する。髄芽腫が代表的な腫瘍であるが、その他の腫瘍はいずれも稀である。原始神経外胚葉性腫瘍(primitive neuroectodermal tumor、PNET)については現在も概念が確立されていないが、原則的にテント上に髄芽腫と区別のつかない腫瘍が発生した場合をテント上PNETと呼ぶことになっている。近年、非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍が疾患単位として確立された。

髄芽腫(medulloblastoma):WHO Grade IV

小児の小脳、特に小脳虫部の下半部に好発し、第Ⅳ脳室に突出した腫瘤を作る。小児では2番目に多く、男児にやや優位である。肉眼的には淡赤色調の柔らかい腫瘤でしばしば播種を認める。腫瘍細胞はクロマチンに富む類円形の核と乏しい細胞質をもち、一側に淡突起を有する人参様を呈している。不明瞭な無細胞領域が介在し、少数のHomer Wrightロゼットがときに認められる。細胞密度は高く、多数の核分裂像が認められ、Ki-67標識率は20%を超える。壊死はときにみられる。腫瘍細胞周囲と基質あるいはsynaptophysin陽性となる。GFAP陽性細胞は少ない。

線維形成性髄芽腫(desmoplastic medulloblastoma):

年長児の小脳半球外側部に好発し、境界明瞭な固い腫瘤を形成する亜型である。やや大きな核と淡明な細胞質を持つ細胞が島状に出現する領域(pale island)と周囲間質の線維増勢(desmoplasia)が特徴的である。島状領域は神経細胞分化を示し、種々の神経マーカーが陽性となる。

非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍(atypical teratoid/rhabdoid tumor,AT/RT):WHO Grade IV

小脳橋角部を中心とする後頭蓋窩に発生する予後不良な乳幼児の腫瘍。腫瘍細胞の核は偏在し、好酸性のすりガラス様の細胞質を有するラブドイド細胞が特徴的である。その他の成分として未分化な神経芽腫様の小型円形細胞、間葉系細胞などが混在している。核分裂像が多く、Ki-67標識率は極めて高い。免疫組織化学的には多彩な抗原発現が認められる。ラブドイド細胞はvimentin、EMA、alpha-smooth muscle actinが高率に陽性となる。INIl遺伝子産物が陰性であることが、髄芽腫などと異なる。