背景・経緯
- 前身の研究所時代も含めると、40年余に渡って精緻に作成された高品質なガラス製病理標本(以下、標本)は、様々な研究活動や教育・研修に利用され、有意義な成果を挙げてきている。しかし染色性の低下(退色)、空気混入による劣化、カビなどの細菌類の付着など、経年的な問題が生じる事があり、日常のメンテナンスは欠かすことができない。また、外部の共同研究者や都立病院医師等がそれらの標本を閲覧し、研究に利用する際には、保管されている当研究所に足を運ぶ必要があり、極めて貴重な研究資産であるものの、活用に際しての利便性が悪いことも問題点であった。
- これら貴重な標本から得られるデータの保存や、活用の利便性を向上・拡充させることが急務であり、また、学際的にも、質や量ともに国内外最大級の脳神経病理標本の所蔵機関としての責務でもあると認識しており、デジタル化へ向けた斬新な取組みにチャレンジした。
- 標本を高精度にデジタルスキャンして得られるデジタル画像データを、コンピューターモニター上で拡大・縮小などして自由に観察する“擬似顕微鏡体験”ができる画期的な機器を、バーチャルスライド装置(以下バーチャルスライド)と言う。バーチャルスライドは20年ほど前から開発されて来たが、約10年前に技術革新がなされ、極めて高解像度の画像デジタルデータを取得することが出来るようになった。また、同時期から少しずつ、本邦のがん拠点病院にバーチャルスライドが導入されるようになり、製造各社の製品の機能や価格も安定化してきた。また、情報通信技術(Information and Communication Technology; 以下ICT)のインフラ整備も全国的に進み、インターネットを介してストレスなく、かつ、ユビキタスに、高精度で大容量の病理画像デジタルデーを閲覧できる時代になってきた。このような情勢を鑑み、東京都医学研・脳神経病理データベースを開発するに至った。
